2013年10月11日金曜日

「国会に」積極的に口出ししなければならない理由(動機付け)

「国会会議録検索システム」で検索して、「第162回国会 衆議院総務委員会議録」第18号(平成17年6月9日)“パブリック・コメント手続を法制化するための行政手続法改正”に関する質疑応答を読んでみると、こんなやりとりがある。

○五十嵐委員 可能性としてはあるわけで、十分にやはり法施行の段階でフォローすることが必要かなというふうに思います。
 同様に、この規定ができたために、本来、国会あるいは地方の議会等で審議されるべき法令、条例等が、本来の法律事項からより下位の政省令あるいは命令、行政指導等に委譲される、そういう言いわけに使われないかという心配も出てくると思うんですね。
 本来、議会に付すべきものを、こういう制度があるからいいじゃないかということで正当化する、より下位の、官が縛られない、あるいは人目にさらされにくいところをより増す、そういう分野をより広げる方向に動く可能性がないかということが二つ目の危険性の一つだと思いますが、いかがでしょう。

○麻生国務大臣 これまで政省令等は、行政の内部の話で、国民に見えないところで行われておりました制定の手続を、いわゆる目に見えるようにする、透明化することによって公正を確保しようとするというのが本来の目的でもあります。そして、意見を考慮して出された結果も、いわゆる一般に公開するというように義務づけておりますので、より国民の目にさらされるということになると思っております。
 実施状況につきまして、この点はもっと問題なのではないか等々の御意見もあろうと思いますが、そういう場合に関しましては、それを適宜指導していく等々の措置はとらねばならぬことも起こり得るとは思っております。
  :
(中略)
  :
○五十嵐委員 大臣の御答弁はもっともです。それはそのとおりなのでありますが、役所あるいは官僚というものは非常にずるいというかずる賢い方々がおられるものですから、より楽な方へ楽な方へと実態的には動きかねないということ、そのいい例が郵政民営化法等、最近出てくる政府案で政省令委任事項が非常に多いということなんだろうと思いますね。
 政省令に委任すると法律に書いてあるからそれでいいんだという言いわけに使われて、実際には、本来明らかにすべき政策の枠や道筋が、逆に政省令にゆだねられて、法案審議の場では余り表に見えてこないということが起こりがちである、そういう傾向を助長しないか。この法律の枠の中では、それは総務大臣の解釈がもっともであるわけですが、この法律の枠を超えて傾向として使われる危険がないかということなのであります。

○麻生国務大臣 一般に、政省令への委任につきましては、手続的な事項とか技術的な事項とか、ほかには事態の推移に応じて臨機応変にというような措置をせねばならないときにされるということになっておると思います。
 いずれにいたしましても、その委任をいたします法律の規定が適当であるか否かとか、また、国会内において、その法律案の審議によってやはりこれは判断されないかぬところなんであって、今言われたように、それは安易過ぎないか、パブコメに付せば審議会でそのままちゃんちゃんというわけにいかぬぞというような御意見は、やはり代表であるこの国会の場においてきちんとされるようにフォローされていく、またはしていくという義務と責任も我々にあろうと存じます。

このやりとりは、「法律案に関する議院に対する意見公募手続」による国民の立法手続きへの参加を考える上で興味深い内容です。
この中で、
「行政手続法上の意見公募手続(パブリック・コメント手続)」を法制化することによって、行政命令の制定過程での国民からの意見公募が手続き保障されていることをいいことに本来法律で定めるべき内容が過度に「行政命令」に委任されるのではないか
と懸念する五十嵐議員に対して、麻生総務大臣(当時)は、
「代表であるこの国会の場においてきちんと(審議)されるようにフォローされていく、またはしていくという義務と責任も我々にあろうと存じます」
と言っているのです。

このことが実は建前であることが同日すぐに明らかになります。
この日の会議録の末尾の記述はこうです。

○実川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
○実川委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 行政手続法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○実川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

この日の審議自体が、
政府案作成→与野党議員への根回し
の後に
質疑応答→討論省略→採決→可決(全会一致)
が院外で決められてから実施されたものということなのです。
「代表であるこの国会の場においてきちんと(審議)されるようにフォローしていくという義務と責任」
はいったいどこに行ってしまったのでしょうか?

こういう「国会審議の形骸化・儀式化」に歯止めをかけなければなりません。
院外での「手打ち」を許さないような歯止めになる制度が必要なのです。

2013年10月8日火曜日

「立法段階」から「国会に」積極的に口出しする、ということ

「なぜ「パブリック・コメント手続」に多くの人々が過大な期待をするのか?」 という記事を書きましたが、どうも私が提案する
「法律案に関する議院に対する意見公募手続」
というものの位置付けや現行のパブリック・コメントとの違いが理解できない方が多いようです。

そこでそのような方のために、現行のパブリック・コメントとの違いを図示してみたいと思います。

現行のパブリック・コメントは「行政命令」に対する意見公募手続です。


法律に基づいて「政令・府省令・告示・審査基準・処分基準・行政指導指針」といった「行政命令」を制定する際に実施されます。すでに制定済みの法律に基づく「行政命令」に対する意見なので、行政命令制定の前提となる法律の規定に変更を要する意見を言う余地は(基本的に)ありません。

これに対して、私が提案する「法律案に関する議院に対する意見公募手続」は、「行政命令制定の前提となる法律」に関して、法律案の国会への提出に先立って先議される議院に対する意見公募手続です。
先に衆議院に提出される法律案に関しては衆議院が、先に参議院に提出される法律案に関しては参議院が、それぞれ意見を公募します。
内閣提出法案であっても所管官庁が公募するのではありませんし、意見提出の宛先は国会議員ではなく、「衆議院」または「参議院」です。

この違いは大きいと私は考えています。

現行のパブリック・コメントは「行政命令」に対する意見公募手続なので、法律の規定の変更や法律制定自体に対する反対意見の提出はそもそもできませんが、 私が提案する「法律案に関する議院に対する意見公募手続」は国会での法律案の審議の前に実施されるものなので、法律の規定の変更や法律制定自体に対する反対意見の提出も可能です。

この点を理解していただきたいと思います。

【参考文献】

宇賀 克也・著