2013年12月20日金曜日

「特定秘密保護法」の全体構造

「特定秘密保護法」(平成二五年法律第百八号)の全体構造を考えてみます。

このブログ記事の目的は、
  1. 巷で流布している「特定秘密保護法」と戦前・戦中の法令との関係についての理解を正し、
  2. 「特定秘密保護法」が何を目指した法律なのかの正確な理解を深めること
です。
改めて私が述べるまでもないことなのですが、詳細な論証を省略して概略を述べさせていただきます。

まず、「特定秘密」のうち「別表(第三条、第五条―第九条関係)」のうち「一 防衛に関する事項」については(テロ特措法と一括で成立した)平成13年(2001年)自衛隊法改正法平一三年法律第百十五号)で盛り込まれた規定(第九十六条の二、第百二十二条、別表第四)がそのままスライドしています。
この点は、「特定秘密保護法」の附則第四条に書かれています。



そして、それらの規定の原型と考えられる戦前・戦中の法令は軍機保護法(昭和一二年八月一四日法律第七十二号)だと考えられます。


一方、「特定秘密」のうち「別表(第三条、第五条―第九条関係)」のうち「二 外交に関する事項」と「三 特定有害活動の防止に関する事項」の原型と考えられる戦前・戦中の法令は国防保安法(昭和一六年三月七日法律第四十九号)(そのうちの「第一章 罪」のみ。「第二章 刑事手続」の部分は除く)だと考えられます。


こうした戦前・戦中の法令を継承したとは考えられない規定の多く(第三章~第六章)は、平成19年(2007年)にアメリカとの間で締結した秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(GSOMIA)の要求事項を盛り込んだものだと思われます(特に「第五章 適正評価」などは GSOMIA で要求されている“秘密軍事情報取扱資格(セキュリティ・クリアランス)”の取得の問題だと思われます)。
一部で言われているような「治安維持法との(直接の)関係」は、少なくとも条文の規定内容や歴史的沿革などからは感じられません。
もちろん、「国会総動員体制を形成する各種法制全体を組み合わせたときの効果」というのはあるでしょうが、それは別の話です。