2013年10月4日金曜日

なぜ「パブリック・コメント手続」に多くの人々が過大な期待をするのか?

昨今、(特にネット上で)行政手続法上の「意見公募手続等」(所謂「パブリック・コメント手続」に驚くほど過大な期待が寄せられている。しかも意見提出の対象は「法の制定」なのだ。

行政手続法上の「意見公募手続等」が対象にしているのは、
意見公募手続等普及啓発用パンフレット
にもあるように、
政令・府省令・告示・審査基準・処分基準・行政指導指針
で、より具体的には、
  1. 政令・府省令・外局規則・人事院規則・会計検査院規則等
  2. 公にされる審査基準・公にされる処分基準・公にされる行政指導指針
だ(当然、は対象外)。

行政手続法に規定されている手続であることから容易にわかるように、
行政府が実施する「行政命令」や「規制」などの実施に際して意見公募をするもの
であって、国会が「立法」する際に実施されるものではないのだ。
中学・高校の社会科教科書にも書いてあるとおり(教科書に書いていなくたって!)日本は三権分立国家なので、「法」は国会が制定し、行政府はその「法」に従って行政を行ない「法の委任」に従って政令・府省令等の各種「行政命令」を制定する。

だから、国会での「法の制定」に際して行政府が実施する行政手続法上の「意見公募手続等」(所謂「パブリック・コメント手続」)で意見を提出するのは本当はおかしいのだ。

そもそも、行政手続法上の「意見公募手続等」(所謂「パブリック・コメント手続」)に
「提出された意見に基づいて案を修正する割合(原案修正率)が低いこと」
が実証的研究によって明らかにされてもいる。

まあ、それはそうだろう。「意見公募手続等」(所謂「パブリック・コメント手続」)の対象である政令・府省令等の各種「行政命令」は「法の委任」によって制定されるものだが肝心の「法の制定」は「意見公募手続等」(所謂「パブリック・コメント手続」)の対象外で、そのほとんどは行政府が法案提出者となって制定されるもので、形式上は「行政府は立法府(国会)が制定する法からの委任の範囲内で行政命令を制定する」ということにはなっているものの、実際には法を制定しているのも行政府の官僚なのだ。
つまり、「行政命令」の枠組みはすべて行政府の官僚が作り上げており、それに関して国民は「立法段階」では実効性のある口出しをしてこないでいて、「行政命令制定段階」に対してだけ何故か(行政手続法上の「意見公募手続等」(所謂「パブリック・コメント手続」)を使って)「立法段階(法の制定)に対する口出し」をしているのだ。

これでは、原案修正率が低くても不思議はない。

ではどうすればいいのか。「立法段階」から「国会に」積極的に口出しするしかない。

だから私は「法案に関する議院に対する意見公募手続」を(行政手続法上の「意見公募手続等」とは別個独立に)定めるべきだと考えている。
ひとまず詳細は控えるが、個人的には具体的にいろいろ考えてはいる。「賛同者」が現れれば少しずつそれらを公開していくが、今はここまでにしておきます。

続きは「賛同者」からの反応が返ってきてから、ということで。


【参考文献】

原田 久・著
『広範囲応答型の官僚制 ―パブリックコメント手続の研究―』(学術選書 64)
信山社 (2011/2/20)
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4797258640/














明渡 将
「実務講座 行政手続法の改正 ―パブリック・コメント手続の法制化 〈行政手続〉」
(『自治事務セミナー』44巻10号,11号,12号(2005),45巻1号,2号,4号,5号,6号(2006))