2014年12月25日木曜日

不思議の国の日本人

日本には日本国憲法という素晴らしい憲法がある。

ところが日本人は、

「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」(日本国憲法第97条)であることも忘れ、

「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」(日本国憲法第12条)というのに「不断の努力」をすっかり怠り、

公務員選定し、及びこれを罷免する…国民固有の権利」(日本国憲法第15条)も棄権するか行使したとして真剣に行使することは極めて稀であるのに、

都合がいいときだけ「民主主義」(「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」・日本国憲法前文参照)という呪文を唱える。

学問の自由は、これを保障する」(日本国憲法第23条)と言われても憲法を理解するための最低限の学問も怠っているのだから、「何が民主主義であって何が民主主義ではないか」もわからないのだ。

2014年7月18日金曜日

集団的自衛権メモ(草稿)

本論に入る前に注意喚起をしておきますが、私の言説を鵜呑みにしないでください。私の言説だけではなく、すべての論者の言説は鵜呑みにせず、
「論者の提示する根拠(証拠と論理)によって論者の言説は正しいと言えるか」
「論者が提示せず自分が持っている証拠からも論者の言説は正しいと言えるか」
を常に考えながら読んでください。

*    *    *    *    *

では、まず結論から先に言えば、「集団的自衛権の国際法上の根拠を国連憲章第51条に求める論理」というのは誤りです。国連憲章第51条はあくまでも“一般国際法上の集団的自衛権に【国連安保理の決定に基づく正式な国連軍派遣まで】という制約を与える規定”だからです。
では、なぜ誤りなのか。これは二度の世界大戦の勃発とその戦後処理の問題が大きく関わってきます。

今から100年前の1914年に第一次世界大戦が勃発しました。
きっかけは、ボスニアの首都サラエボで起きたセルビア人青年によるオーストリア皇太子暗殺事件(サラエボ事件)です。当時の歴史に詳しくないヒトはなぜこれが世界大戦のきっかけになるのかわからないと思いますが、実は当時のヨーロッパでも多くのヒトは当初はこれがきっかけで世界大戦に発展するとは思ってもいませんでした。

世界大戦に発展した原因は、後に「三国同盟VS三国協商」と呼ばれる「同盟関係」に基づく「集団的自衛権の行使」です。

ここで言う「三国同盟」とは「第一次世界大戦前、ドイツ・オーストリア・イタリア間で結ばれた同盟関係」で、「三国協商」とは「19世紀末から20世紀初頭においてイギリス・フランス・ロシア帝国の各国の間で締結された露仏同盟・英露協商・英仏協商によって作られた三国の協調関係」のことを言います。これによって〔細かい経緯は省略しますが〕セルビア-オーストリアの二ヶ国間問題が〔現在で言う〕「集団的自衛権」の行使の応酬によって世界的な戦争に発展しました。

日本も、三国協商側のイギリスとの間での日英同盟を理由に宣戦を布告し、三国同盟側のドイツが中華民国から租借していた山東省青島を陸軍が攻略、海軍はドイツが植民地支配していた南洋諸島を攻略しました(ここに1931年~1945年の日中15年戦争から現在までに至る日中問題の根源の一つがあります)。

第二次世界大戦後に制定された国連憲章第51条は、このような〔二度の〕世界大戦の原因の一つに「集団的自衛権の無制約な行使の応酬」があるとの反省のもとに制定されたのです(他の原因として「敗戦国に対する多額の賠償金」「国際恐慌を乗り切るためのブロック経済」もありますが、本論(=集団的自衛権)との関係は希薄です)。

そこで、〔一般的には戦争の禁止を謳いつつ〕国連安全保障理事会による正式な国連軍(「国際の平和及び安全の維持に必要な措置」)ができるまでの間という制約の下に一般国際法上の国家の固有権としての〔個別的自衛権と〕集団的自衛権の行使を限定的に容認したのです。

第51条 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。


ただ、これには限界があります。国連安全保障理事会には常任理事国による拒否権があるということです。〔過去のソ連とアメリカ、現在のロシア・中国とアメリカのように〕紛争当事国双方の同盟国が常任理事国であることが通常だからです。

もちろん常任理事国による拒否権にも「国際紛争の現実的解決力を持つ軍事大国が影響力を行使できなかった」という国際連盟の失敗を防ぐ一定の役目があるのですが、結果的に国連憲章第51条が前提としている「国際の平和及び安全の維持に必要な措置」である正式な国連軍結成の妨げとなってしまっています(「多国籍軍」というものを国連憲章の別の規定を根拠に結成しているのが現状です)。

2014年2月23日日曜日

法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」について

特定秘密保護法をはじめとした“問題のある刑罰法規” の違反に関する刑事裁判を考える上で気になる動きがあります。

それは、
法制審議会 新時代の刑事司法制度特別部会
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi03500012.html
です。

“取り調べの可視化” など国民にとってプラスになるものだけではなく、
証拠開示”といった運用や規定次第ではプラスにもマイナスにもなり得るもの
通信・会話傍受”のようなマイナス面が懸念されるものまで幅広く検討されています。

議事録と審議資料が上記URLで公開されています。

検討の概要は
「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」(平成25年1月)
http://www.moj.go.jp/content/00010628.pdf
 「作業分科会における検討結果(制度設計に関するたたき台)」(平成25年2月)
http://www.moj.go.jp/content/000120368.pdf

をご覧ください。


なお、作業分科会ごとの検討項目は以下の通りです。

【第1作業分科会】
  • 「被疑者・被告人の身柄拘束の在り方」
  • 「取調べの録音・録画制度」
  • 「刑の減免制度」
  • 「捜査・公判協力型協議・合意制度」
  • 「刑事免責制度」
  • 通信・会話傍受」「通信傍受の合理化・効率化」「会話傍受

【第2作業分科会】
  • 「犯罪被害者等及び証人を支援・保護するための方策の拡充」
  • 「公判廷に顕出される証拠が真正なものであることを担保するための方策等」
  • 証拠開示制度」
  • 「自白事件を簡易迅速に処理するための手続の在り方」
  • 「被疑者国選弁護制度の在り方」「被疑者国選弁護制度の拡充」
  • 「犯罪被害者等及び証人を支援・保護するための方策の拡充」

2014年1月24日金曜日

『民法入門・担保法革命』 (ビジュアル民法講義シリーズ)

以前ダイジェスト版を紹介した明治学院大学法科大学院の加賀山茂教授の講義ビデオ教材が“DVD付き書籍”になりました。

加賀山 茂・著
『民法入門・担保法革命』 (ビジュアル民法講義シリーズ)
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4797235918/

オススメです。

2013年12月20日金曜日

「特定秘密保護法」の全体構造

「特定秘密保護法」(平成二五年法律第百八号)の全体構造を考えてみます。

このブログ記事の目的は、
  1. 巷で流布している「特定秘密保護法」と戦前・戦中の法令との関係についての理解を正し、
  2. 「特定秘密保護法」が何を目指した法律なのかの正確な理解を深めること
です。
改めて私が述べるまでもないことなのですが、詳細な論証を省略して概略を述べさせていただきます。

まず、「特定秘密」のうち「別表(第三条、第五条―第九条関係)」のうち「一 防衛に関する事項」については(テロ特措法と一括で成立した)平成13年(2001年)自衛隊法改正法平一三年法律第百十五号)で盛り込まれた規定(第九十六条の二、第百二十二条、別表第四)がそのままスライドしています。
この点は、「特定秘密保護法」の附則第四条に書かれています。



そして、それらの規定の原型と考えられる戦前・戦中の法令は軍機保護法(昭和一二年八月一四日法律第七十二号)だと考えられます。


一方、「特定秘密」のうち「別表(第三条、第五条―第九条関係)」のうち「二 外交に関する事項」と「三 特定有害活動の防止に関する事項」の原型と考えられる戦前・戦中の法令は国防保安法(昭和一六年三月七日法律第四十九号)(そのうちの「第一章 罪」のみ。「第二章 刑事手続」の部分は除く)だと考えられます。


こうした戦前・戦中の法令を継承したとは考えられない規定の多く(第三章~第六章)は、平成19年(2007年)にアメリカとの間で締結した秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(GSOMIA)の要求事項を盛り込んだものだと思われます(特に「第五章 適正評価」などは GSOMIA で要求されている“秘密軍事情報取扱資格(セキュリティ・クリアランス)”の取得の問題だと思われます)。
一部で言われているような「治安維持法との(直接の)関係」は、少なくとも条文の規定内容や歴史的沿革などからは感じられません。
もちろん、「国会総動員体制を形成する各種法制全体を組み合わせたときの効果」というのはあるでしょうが、それは別の話です。